コラム
【2026年10月施行】カスハラ対策が義務化|企業が取るべき5つの対応を弁護士が解説

はじめに
近年、パワハラやセクハラなどの様々なハラスメント問題が、取り沙汰されており、社会問題となっています。本コラム執筆時点で話題となっている一例として一部週刊誌では、俳優の佐藤二朗さんがドラマの現場で俳優の橋本愛さんに対して「ハラスメント」をしたという報道がなされ、何が「ハラスメント」に当たるのか世間では大きな議論となっています。
一方で、国としては、「ハラスメント」対策強化を進めており、2026年10月1日に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(以下「労働施策総合推進法」といいます。)の一部改正が施行されました。同改正では、近年で問題となっている「カスタマーハラスメント」への対策の義務化などが、定められており、経営者にとっても押さえておくべき内容となっています。
今回のコラムでは、労働施策総合推進法の改正のポイントを押さえると共に、現状法令で定められている各種「ハラスメント」の内容と意味合いについて解説していきたいと思います。
近年では、「ハラスメント」という言葉が当たり前に使われていますが、その意味合いをあまり意識していない方も多いのではないかと思います。英語の「Harassment」は直訳すると「嫌がらせ」や「悩ますこと」という意味ですが、和製英語としての「ハラスメント」は、英語の意味よりも広く「精神的・身体的苦痛を与える行為」又は「職場環境を害する言動」(労働施策総合推進法第4条第15号参照)を表すと一般的に解釈されています。
「ハラスメント」については、現代において非常に多くの種類に大別されますが、事業主の義務としては以下の5種類のハラスメントの対策を講じることが法令上求められています。

カスタマーハラスメントとは、具体的にどのようなケースをいうのか?
今回の法改正で施行される「カスタマーハラスメント」の定義は、上記の表のとおりですが、「社会通念上許容される範囲を超えたもの(顧客等言動)」(労働施策総合推進法33条)とはいかなる場合にいえるのでしょうか。
「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(以下「カスハラ指針」といいます。)では、典型的な例として、2つの種類に分けて以下の類型を挙げています。
【言動の内容が社会通念じょう許容される範囲を超えるもの】
ア そもそも要求に理由がない又は商品・サービス等と全く関係のない要求
→性的な要求や、労働者のプライバシーに関わる要求すること。
イ 契約等により想定しているサービスを著しく超える要求
→契約内容を著しく超えたサービスの提供を要求すること。
ウ 対応が著しく困難な又は対応が不可能な要求
→契約金額の著しい減額の要求をすること。
エ 不当な損害賠償要求
→商品やサービス等の内容と無関係である不当な損害賠償要求をすること。
【手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるもの】
ア 身体的な攻撃(暴行、傷害等)
→殴る、蹴る、叩く等の暴行
イ 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要等)
→SNS等のインターネットへ悪評を投稿することをほのめかす発言によって労働者を脅すこと。盗撮や無断での撮影をすること。
ウ 威圧的な言動
→大きな声をあげて労働者や周囲を威圧すること。
エ 継続的、執拗な言動
→当初の話からのすり替え、揚げ足取り、執拗な責め立てをすること。
オ 拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)
→長時間に渡る居座りや電話で労働者を拘束すること。
今回の改正で事業主が具体的にするべき対応とは?
カスタマーハラスメントの定義や内容は、前述したとおりですが、具体的に2026年10月1日改正で事業主が具体的にするべき対応としては、以下の5つがカスハラ指針で挙げられています。

【事業主の方針等の明確化およびその周知、啓発】
具体例:
社内ホームページや社内報等の資料に、カスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を記載する。
カスタマーハラスメントへの対処の内容を労働者に対して周知するための研修、講習等を実施すること。
【相談・苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備】
具体例:
相談窓口の設置(相談に対応する担当者をあらかじめ定めること)
相談窓口の担当者が相談を受けた場合のマニュアルがあること、相談窓口の担当者に対して相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと
【職場におけるカスハラに係る事後の迅速かつ適切な対応】
具体例:
事案の内容に応じ、管理監督者等が被害者に代わってその場で可能な限り事実関係を確認し対応すること
【職場におけるカスハラへの対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置】
具体例:
カスタマーハラスメントのうち、特に悪質と考えられるものへの対処の方針を定め、労働者に対して周知すること。
【併せて講ずべき措置】
具体例:
相談者等のプライバシーを保護するために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、当該マニュアルに基づき対応すること。
今回のコラムでは、カスハラ指針に準じて具体例の一部を紹介していますが、カスハラ対策としてできることは各企業の規模やリソースで異なると考えられます。実際に自社にできることは何か、どこまでやれば法令上の義務を果たしているといえるかについてはぜひ弁護士等の専門家に確認されることをお勧めします。
最後に
2026年10月1日法改正の為、中小企業によっては理解が追いつかず、対応できていない会社も多いと思います。佐々木法律事務所では、経営者の方が不安に思われる法改正への対応に迅速かつ適切に対応していきますので、ぜひご相談ください。
コラム監修:
弁護士法人 佐々木法律事務所
代表 佐々木幸駿