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【中小企業向け】フリーランス法とは?業務委託で注意すべき義務・禁止行為を弁護士が解説

はじめに

 「【2026年施行】取適法(旧下請法)とは?対象企業の判断基準と法改正のポイントを解説」及び「【2026年施行】取適法(旧下請法)の義務・禁止行為とは?違反リスクと支払期日の注意点を弁護士が解説」のコラムでは、2026年1月1日から施行された取適法について解説いたしました。

「【2026年施行】取適法(旧下請法)とは?」のコラムで説明したような従業員基準が加えられても、取適法について自社は関係ないという中小企業も少なくないと思います。

一方で、従業員が100人を超える会社との取引はなくとも、自社が、個人事業主の方に業務委託で仕事をお願いすることがあるという企業は非常に多いのではないかと思います。

そのような場合、適用されるのが、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法、以下「フリーランス法」といいます。)です。同法は、令和6年11月1日に施行済みではありますが、令和8年6月10日付けの公正取引委員会の発表((令和8年6月10日)令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況及びフリーランスに係る取引の適正化に向けた取組 | 公正取引委員会)では、令和7年度の指導・勧告の件数が1,552件に上っているとのことであり、中小企業に周知されているとは言い難い状況です。

そこで、今回は、フリーランス法が適用されるのは、どのような場合か、特に気を付けるべき点はどのような点なのかを解説したいと思います。

フリーランス法が適用されるのはどのような場合か?

 フリーランス法では、適用対象を事業者が「特定受託事業者」に対して業務委託をした場合とされており、事業者の中でも「特定委託事業者」が「特定受託事業者」に対して業務委託した場合により詳細な規制を定めています。

フリーランス法第2条において「特定業務委託事業者」と「特定受託事業者」とは、以下の表のように整理されています。

 まず、特定委託事業者について要件②は、ア~ウのいずれかを満たせば良いことになります。そのため、次の具体例に該当して業務委託を行う場合が、委託事業者に該当します。

アの具体例

・個人事業主として税理士をしており、事務員として従業員を使用している場合

イの具体例

・従業員はいないが、代表取締役1名と取締役1名の計2名で対応している運送会社

ウの具体例

・システムエンジニアを2人雇用しているIT企業

 次に、特定受託事業者も「あ」ないし「い」のいずれかの場合を満たして業務委託を受ける場合が該当します。

「あ」の具体例

・デザイナーをしており、事務員などを雇わず、1人で対応をしている個人事業主

「い」の具体例

・WEBアプリ開発を行うが、代表者1人以外に役員や従業員がいない会社

以上のように、「委託事業者」は1人法人以外の全ての中小企業が適用範囲となっており、「特定受託事業者」は、ほぼすべてのいわゆるフリーランスの方に適用されるのでその適用範囲は非常に広いものといえます。

フリーランス法が適用されるとどうなるのか?

 それでは実際にフリーランス法が適用されると通常の取引どう変わるのかについても解説したいと思います。

フリーランス法が適用されると、フリーランス法に基づく①「委託事業者の義務」が発生し、②「委託事業者の禁止行為」の適用があります。

これらの規制に違反するないし違反が疑われる事象が発生すると公正取引委員会、中小企業庁及び厚生労働省による報告徴収・立入検査が行われ、調査の結果次第では、指導・助言や勧告が行われ、勧告に従わない場合には罰金が科されることもあります。

刑事罰は、言わずもがなではありますが、行政機関からの調査への対応も中小企業の経営者としては負担となると思いますので、避けるべきであるといえます。

フリーランス法で義務付けられる「委託事業者の義務」と「委託事業者の禁止行為」とは?

フリーランス法で発生する義務は、委託者事業者の性質や業務委託の期間によって大きく分けて、以下の3段階に分けられます。

(1)全ての委託事業者に適用される義務

ア 取引条件の明示義務(フリーランス法第3条)

 特定受託事業者(フリーランス)に対して業務を委託した事業者(フリーランスも 含まれます)は、直ちに取引の条件を、書面または電磁的記録により明示しなければならないとされています。

なお、電磁的記録で明示した場合に、特定受託事業者(フリーランス)から書面での明示を要請された場合には、遅滞なく書面を交付する必要があります。具体的に明示するべき取引条件の内容は以下の7項目です。

  • 業務委託事業者および特定受託事業者の名称
  • 業務委託をした日
  • 特定受託事業者の給付の内容
  • 給付を受領または役務の提供を受ける期日
  • 給付を受領または役務の提供を受ける場所
  • 給付の内容について検査する場合は、検査を完了する期日
  • 報酬の額および期日

(2)特定委託事業者に適用される義務

イ 期日における報酬支払義務(フリーランス法第4条)

 発注した給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で、支払期日を定めて、その日までに報酬を支払わなければならないとされています。なお、再委託の場合は例外として元委託支払期日から起算して30日以内のできる限り短い期間内で定めることができる。

例)●月●日までに支払う→具体的な支払い期日ではないため、違反!

ウ 募集事項の的確表示義務(フリーランス法第12条)

 広告等によりフリーランスを募集する際は、その情報について、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければなりません。

→誤解を生じさせるかは、一般的・客観的に判断されます。
特に、実際の報酬額等よりも高額であるかのような表示や実際の業務内容と著しく乖離するような表示がないように留意してください。

エ ハラスメント対策に係る体制整備義務(フリーランス法第14条)

 ハラスメントによりフリーランスの就業環境を害することのないよう相談対応のための体制整備その他の必要な措置を講じなければならないとしています。また、フリーランスがハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由として不利益な取扱いをしてはならないとされています。

→「相談体制の整備」の具体例とは?・・・外部機関への相談対応の委託、相談担当窓口の設置などが挙げられます。

(3)特定委託事業者で、かつ業務委託の期間が一定期間以上である場合に適用される義務

オ 委託事業者の禁止行為(フリーランス法第5条)

 特定委託事業者が、フリーランスに対して1ヵ月以上の業務委託を行う場合、以下の七つの行為が禁止されています。それぞれの具体的な事例は、前回のコラムで記載しておりますので、気になった方はぜひご確認ください。

  • 受領拒否
  • 報酬の減額
  • 返品
  • 買いたたき
  • 購入・利用強制
  • 不当な経済上の利益の提供要請
  • 不当な給付内容の変更、やり直し

カ 育児介護等と業務の料率の対する配慮義務(フリーランス法第13条)

 特定委託事業者が、フリーランスに対して6ヵ月以上の業務委託を行う場合、フリーランスが妊娠、出産、育児または介護と両立できるよう、必要な配慮をしなければなりません。なお、6か月未満の場合は努力義務とされています。

→「必要な配慮」の具体例とは?→フリーランスからの申し出があったときに、①申し出の内容を把握すること、②取り得る選択肢の検討をすること、③検討の結果と理由を伝達することが求められます。

キ 中途解除等の事前予告・理由開示義務(フリーランス法第16条)

 特定委託事業者が、フリーランスに対して6ヵ月以上の業務委託について、契約の解除または不更新をしようとする場合、例外事由に該当する場合を除いて、解除日または契約満了日から30日前までにその旨を予告しなければなりません。

具体的な事例で考えてみよう!

 Q:ホームページ作成を得意とするフリーランスのエンジニアであるAは、高校からの同級生Cが設立して複数名の社員を雇用するB社からホームページの作成依頼を受けた。

Aは2026年8月末までという契約とおりにホームページを作成し、Cは大変満足し、報酬である20万円を支払った。しかし、納品から2か月が経ったあとに、CからAに対して「料金体系が変わったのでホームページのここの部分を少し変えてほしい。」との要請があり、AはCとの友人関係から無償でホームページの修正を行うことに同意した。かかる事例においてフリーランス保護法違反はあるか。

 A:B社がAに委託したホームページ作成について、納品後に、修正を求めて対応させる行為は、たとえ当事者であるAが同意したとしても「不当な給付内容の変更・やり直し」に当たるため、フリーランス保護法第5条第2項第2号違反となります。

委託事業者の「禁止行為」は、フリーランスの同意があったとしても禁止されていますので、注意が必要となります。

最後に

 今回は、フリーランス法について解説いたしました。フリーランス法は施行から一定期間が経過していますが、中小企業では特に対応が追いつかず、対応できていない会社も多いと思います。

今後、厚労省等の関係省庁が規制を強めていくことも考えられるので、なるべく早い段階での対応が必要となります。弁護士法人 佐々木法律事務所では、経営者の方が不安に思われる法改正への対応に迅速かつ適切に対応していきますので、ぜひご相談ください。

コラム監修:
弁護士法人 佐々木法律事務所
代表 佐々木幸駿

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